「善意者」と「悪意者」(川本) |
私人間の権利義務関係を規律する法律、民法や会社法においては、「善意」「悪意」という用語がしょっちゅう登場します。 この善意と悪意は、社会一般で使用される「好意的な」とか「敵対した」という意味とは全く違い、単にその事実を「知らない(善意)」・「知っている(悪意)」という意味で使われます。
法律は、起こった事実を「知らない人」と「知っている人」とで保護する度合いを明確に区別しているのです。
例えば、民法93条にある心裡留保 ある人が「この豪邸をあげます。」と相手に意思表示した場合、この人は本心であげるつもりがなく嘘を言ったとしても、相手に対して明確な意思表示をしたのであれば、如何なる結果になろうと法律は発言者を保護する必要はないと考えます。 発言者の本心を知らず(善意者)、この言葉を信じた人を保護することになるのです。
しかし、この言葉は嘘であることを知っている人(悪意者)、又は、ちょっと注意すればこの言葉が嘘であると直ぐに分かるにもかかわらず予見できなかった(過失がある)人は、法律の保護には及ばず、単なる冗談話で事が済んでしまいます。
一般的な感覚からも当たり前のような内容に思えますが、権利が対立する私人間のどちらが法律の保護受け、権利を獲得するかということを明確にするのが、私法の重要な役割の一つとなります。
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2012/11/05
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